【小説】『特捜部Q 知りすぎたマルコ』の感想・あらすじ

北欧ミステリーの中でもキャラクターがユーモアがあって魅力的なので、悲惨な話だけだとちょっときついという人にもおすすめの小説。デンマークのベストセラー小説「特捜部Q」シリーズの5作目について 感想・あらすじをご紹介。

「特捜部Q 知りすぎたマルコ」はどんな話

デンマークのベストセラー作家ユッシ・エーズラ・オールスンによるミステリ小説「特捜部Q」シリーズ5作目。

未解決事件を専門に扱う部署「特捜部Q」が今回捜査をするのが、外務官僚の失踪事件。 一方、窃盗団から脱走した少年マルコは隠れた場所で重大な秘密を知り命を狙われることになる。。。 失踪事件の捜査を進める「特捜部Q」と口封じのために命を狙われるマルコ。 マルコの手に汗握る逃走劇と活躍にどんどん引き込まれる。もちろん特捜部Qのくすっと笑えるやりとりも見逃せない。何より今作ではローセの活躍が印象的。 ハリウッド映画を彷彿とさせる派手な展開もあるので北欧ミステリ初心者にもおすすめ! また、陰惨な事件ばかりでたまには気分を変えたい人にも是非読んでほしい作品。

ちなみに第1作目「檻の中の女」、第2作目「キジ殺し」は映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(スウェーデン版)のスタッフにより映画化されている。面白いので是非おすすめです。 そして、第3作目「Pからのメッセージ」も2017年1月28日より上映。

登場人物の紹介

カール・マーク

主人公で「特捜部Q」の責任者。結婚生活は破綻している男性。 釘打ち機事件で仲間を一人失い。相棒は首から下が麻痺した状態になった。 そして自身も銃弾を受け手の震えや発作をかかえている。

ハーフェズ・エル・アサド

特捜部Qカールのアシスタント。警察ではない一般人。 デンマークの文化にまだ慣れていないシリア系の移民。 数々の修羅場をくぐったのか、格闘や尾行などの捜査に高い能力を発揮する。 謎の多い人物。名前も本名か怪しく素性がよくわからない。ラクダのたとえ話が好き

ローセ・クヌスン

特捜部Qの唯一の女性。警察学校で最優秀の成績をおさめたが、運転免許がとれなかった人物。全身黒ずくめのパンクな見た目だが、 内面はもっとパンク

ハーディ・ヘニングスン

カールの元同僚で今は同居している。釘打ち機事件で捜査中に 銃撃され首から下が麻痺し寝たきりになっている。 カールが助言を求めるほど、捜査能力は高い。   全てに絶望しカールに自殺の手伝いを頼んだんこともある。

ヴィルヤム・スターク

外務省上級参事官。真面目な性格で同棲している恋人とその義理の娘をすごく大切にしてる。 調査のために訪れたアフリカだったが到着後、予定を早めて帰国。その直後から行方不明になる。

ティルデ・クリストファスン

スタークの義理の娘。クローン病という難病を患っている。 スタークをとても大切に思っており、 スタークが行方不明後は尋ね人の張り紙をはって必死で捜索している

マリーネ・クリストファスン

ティルデの母

マルコ・ジェイムソン

窃盗団で子供の頃から物乞いやスリをさせられている少年。 窃盗団脱走の際に窃盗団の重大な秘密を握ることになり、命を狙われる。

「特捜部Q 知りすぎたマルコ」はあらすじ

ジャー開発援助のリーダーがアフリカの地で殺害されるところから物語ははじまる。 彼は死の間際にヴィリアムへメールを送る。ヴィリアムは局長がアフリカから帰国後に リーダーと連絡がとれなくなったことや謎のメールを残して消息をたったことで 局長に対して不信感を抱く。 そんな彼に局長はアフリカのプロジェクトに問題がないか現地で確認してくるように命令。ヴィリアムはアフリカへ到着するとなぜか予定を早めてデンマークへ帰国。その後失踪してしまう。

一方、子供の頃からスリや物乞いをされられてきた少年マルコは偶然、窃盗団の首領が マルコを障害者にして保険金を手に入れようとしている話を耳にする。しかも盗み聞きしていることがバレて、そのまま窃盗団から逃走することになる。その後マルコは逃走中に隠れた場所で窃盗団の重要な秘密を知ってしまい、今度は命も狙われるようになることに。移民のマルコは警察へ保護を求めることもできません。また、窃盗団の父もその重要なことに関係しているため、通報することもできない。

他方、特捜部Qではローセの研修をかねて、ボートの火災に関する事件を捜捜。聞き込み捜査の最中ローセは一枚の張り紙に目をとめる。尋ね人の張り紙。。。それから 一見単純そうに見えたボートの事件は、ローセにより意外な真相にたどりつく。無事事件を解決したローセはカールにこの尋ね人の事件を捜査したいと告げる。まったくもって乗り気ではなかったカールだったが、ローセの調べによりいくつか単なる失踪事件でない不審な点が発見される。ヴィリアム失踪直後に自宅があらされるが、指紋は拭き取られ、枕は引き裂かれ単なる物取りの犯行ではないこと。また、そもそもヴィリアムはアフリカで失踪するのではなく予定を早めてデンマークへ帰国し消息をたっている点など。 またしてもカールはローセによって猟犬の本能に火をつけられてしまうことに。こうして特捜部Qは尋ね人の捜査に乗り出す。

「特捜部Q 知りすぎたマルコ」感想

このミステリ小説は、北欧ミステリならではの陰惨な話は影を潜め、 そのかわりに海外ドラマを思わせる息をもつかせぬ展開と逃走劇が魅力。 とくに賢くて魅力的なマルコがせまりくる危機にどう対応するのかというところが読者を 物語に引き込んでいく。

家族や絆について考えさせられる作品でもあります。ヴィリアム・スタークを思う難病のティルデや妻の姿に胸を打たれる。

そして今回特捜部Qメンバーの魅力が存分に描かれた作品になっています。とくにローセは一番の活躍。

最後にマルコの折れない心にしびれる。窃盗団に狙われるし、不法滞在で身分証明書すらない状況。それでもマルコは諦めません。 学校も出ていないし、子供の頃から物乞いかスリしかしていません。それでも窃盗団から逃げた後は犯罪に手を染めることなくなんとかデンマークで暮らしはじめる。この時点でかなりすごい。しかし、人間らしい暮らしも長くはつづきません。窃盗団に見つかってからは命を守るための戦いが次々やってくる。もしも、自分がマルコと同じ状況だったらと思って読むとより一層マルコの孤独な状況と強さに頭がさがる思いになるでしょう。こちらも是非映画化してほしい作品。