『宇宙の戦士』パワードスーツがガンキャノンに見える

恐るべき破壊力を秘めたパワードスーツを着用し、宇宙空間から惑星へと降下、奇襲をかける機動歩兵。地球連邦軍に志願したジョニーが配属されたのは、この宇宙最強部隊だった。肉体的にも精神的にも過酷な訓練や異星人との戦いの日々を通して、彼は第一級の兵士へと成長していく……。ミリタリーSFの原点ここに。映画・アニメに多大な影響を与えた巨匠ハインラインヒューゴー賞受賞作

著者:ロバート・A ハインライン

『宇宙の戦士』のここがポイント

兵士として成長していく物語

なんとなく流される感じで兵士に志願したジョニーだったが、 過酷な訓練の中で男として兵士として成長していく物語。 訓練といっても死傷者がでるので本当に命がけ、そうした日々の訓練を通じてジョニーは成長していく。

民主主義の崩壊

学生時代の教師の教えを思い出し、民主主義の崩壊の話がでてくる。 どうやって民主主義が腐っていったのか、そして軍事政権により完全なる統治がはじまったという お話が授業として説明されている。民主主義を批判しているので反感を持つ人もいるかもしれないが、 民主主義の欠点を捉えているので、興味を持つ人が多いと思う。 子供の犯罪を題材として説明している。子供が犯罪を犯しても、閉じ込めるだけで罰を与えなかったために 大人になっても犯罪を繰り返す人が多いというもの。 理由は捕まっても閉じ込められる程度なら、何をすれば目の前の問題をクリアできる 可能性があるのかを考えた結果、犯罪に手をそめるという考え。 こうして罰を与えないことで犯罪は増加の一途をたどったという話。こういった ことをジョニーの学生時代の話として知ることができる。

軍隊の話

上官との関係、同僚との関係など生死をかけた作戦に挑む軍隊ならではのコミュニケーションの とりかたが、なんか昔の青春ドラマのようで意外性があった。後腐れないようにするための 工夫があって組織の運営など興味深い。それと粋な上官が多くて思わずニヤリとしてしまう 場面がなんどもあった。うーんカッコ良い大人たちだ。

パワードスーツ

パワードスーツという軍用兵器が登場する。人が装備して動作する軍事用の宇宙服のような 兵器だ。人間が操縦するロボットだと腕や頭がなくともコックピットが 無事なら兵士は生存可能だが、パワードスーツの場合は、ダイレクトに被害が兵士に及ぶ点という点だと 思う。戦争にいくならより安全なロボットの方が良い。モビルスーツでお願いします。

ちなみにパワードスーツは登場する物語だけど、少しなのでそこだけに期待していると がっかりすることになる。

影響を与えた

機動戦士ガンダム誕生に影響を与えたという話は有名。量産されている軍用の兵器を使用するというが 多くの作品に影響をあたえている。ちなみにガンダムガンキャノンは、パワードスーツのデザインも 影響しているとのこと。どうりで似ていると思った。

映画化されている

実写映画は1997年にポール・バーホーベン監督による『スターシップ・トルーパーズ』がある。 こちらはパワードスーツが登場しない。昆虫型のエイリアンであるバグズと人間との戦闘が中心として 描かれている。戦闘シーンはベトナム戦争映画を彷彿させる絶望的な状況が多々描かれている。あと 生身なので見ていて常にハラハラする。こうした点ではパワードスーツが無いことが帰って緊張感を高めている。 しかし、ちょっとパワードスーツが見たかった。どうしてもというなら『All You Need Is Kill』が 映像としては近いものがあるのでそちらをどうぞ。ストーリーはまったくちがうけどおすすめできる。

また、『宇宙の戦士』はOVAアニメとしても映像化されている。 制作はなんとガンダムと同じくサンライズ!!1988年の作品 パワードスーツがしっかりと活躍している。 とはいえ中心となるのは軍隊における青春の物語なので基本は小説版と同じだ。

おわりに

軍隊における兵士の成長の話でもあるし、民主主義の問題点を投げかける話でもある。 さらに家族や人との絆についても考えさせられる作品。 あと上官が粋な人が多い。軍隊という道の世界を垣間見せてくれるし、 民主主義が崩壊したあとの人類の選択など、歴史の授業が面白い。 このようにいろいろな楽しみかたができる作品。もちろんパワードスーツによる戦闘も 迫力があってカッコ良い。