【小説】『ルミッキ1 血のように赤く』サラ シムッカのルミッキ三部作の第一弾!

鍛えられた肉体と頭脳だが、孤独を好むルミッキ。ある時学校の暗室で 血に染まっている大金を見つけてしまう。他人とは関わらないことが自分の安全につながるという彼女の考えとは裏腹に他人を見捨てきれずに事件に巻込まれていくことに。そして、ドラッグ、汚職、売春、殺人など犯罪事件と暗躍する"白熊"との対立!さらには事件を追いかけていくうちに解き明かされるルミッキの過去!フィンランド初の北欧ミステリー3部作として日本上陸。著者はサラ・シムッカでヤング・アダルト向けの作品となっている。世界約50カ国で翻訳されているベストセラー。社会問題をとりあつかっている。

著者:サラ・シムッカ

強くて美しい、そして個性的なヒロイン

強くて美しくて個性的なルミッキだが、物語の当初は美しさの部分は成りを潜めている。 彼女は誰とも関わらずに、孤独に過ごすことが好きで大切な時間と考えている。とはいえだれとも話さず過ごすわけにはいかないが、可能な限り一人になりだれとも話さない時間を作りたがっている。基本的に人間嫌いなことが伺える。彼女の過去にはなにかしら問題が起こったように思えるが、それは物語が進むと解明されていく。 作中、「ポワロ」と「リスベット・サランデル」との隠し子というルミッキのセリフがある。強くて孤独て個性的なヒロインだとリスベットが思い浮かんでいたのでなるほど納得のセリフ。 ただ、彼女とリスベットとの違いはリスベットより危うい点だろうか。 ルミッキは鍛えているが、別に格闘技など特殊な訓練をしているわけでもなくボクササイズで汗を流しているだけだ。その点リスベットはボクシングをやっていて男性相手にスパーリングをするなどして鍛えている。サシなら男性に負けない戦闘力がある。対してルミッキは格闘技をやっているわけではなく同年代の学生の中では強くても、体の大きな危ない世界の男性には勝てるというわけではないのだ。 そこが危うすぎて、ハラハラさせられて面白い。行ったらヤバイんだよ!考え直した方がいいよっ!と心の中でルミッキにアドバイスをするのだが、一ミリも歩みをとめずにどんどんと事件の深みにはまっていくルミッキ。その方が物語としては盛り上がるので安心してほしい。いや、安心できない話だけども。

ルミッキの謎

ルミッキには謎がたくさんある。なぜ人との関わりを極力なくしているのか。なぜ体を鍛えているのか。巻き込まれてしまった事件とは別にルミッキの謎も物語を盛り上げる要素となっている。

おとぎ話とミステリとサスペンス

ところどころにおとき話になぞらえて物語を進める手法が取られているので斬新。 ルミッキという白雪姫という意味の名前も物語のテーマとなっている。 ちなみにフィンランドではルミッキは普通につけられる名前のようだ。

おわりに

ルミッキはヤングアダルト向けということで、十代の少女が物語の中心だけど 北欧ミステリらしく社会問題を取り上げており、大人でも読み応えがあるので安心してほしい。 本書でルミッキのひみつはまだ全部があかされていない。ぜひ三部作を読んでみましょう。