【感想】映画化決定!『三秒間の死角』北欧ミステリーの傑作!

潜入捜査官の危うい立場と任務の過酷さ。2重生活の葛藤が描かれている。 また、刑務所内で麻薬取引を牛耳る方法など、潜入捜査官パウラの数々の戦略に予想は裏切られる。

あらすじ

犯罪組織の中枢にまで潜り込んだスウェーデン警察の潜入捜査員パウラ。組織に与えられた任務は、刑務所内に麻薬密売の拠点を作ることだった。秘密裏に政府上層部のお墨付きを得たパウラは、巧妙な手段で麻薬を所内に持ち込み、ライバル業者を蹴落として商売を始めた。だが、パウラの正体を知らないまま、入所前に彼がかかわった殺人事件を捜査するグレーンス警部の追及の手が迫るのを知った政府上層部は非情な決断を下す…。英国推理作家協会(CWA)賞受賞、スウェーデン最優秀犯罪小説賞受賞。

著者:アンデシュ・ルースルンド,ベリエ・ヘルストレム

翻訳:ヘレンハルメ 美穂

受賞:英国推理作家協会(CWA)賞受賞、スウェーデン最優秀犯罪小説賞受賞

メディア:映画化決定

犯罪組織の拠点に刑務所がなりうる現実とは

北欧ミステリーファン必読の傑作。

潜入捜査官のパウラの家族にさえ本当のことを話せない苦悩や追い詰められるパウラも緊張感があって手に汗握る展開だ。さらに興味深いところで犯罪組織が麻薬市場拡大の拠点として刑務所を最初のターゲットにするということだ。そんなことがありえるのだろうかと驚いた。市場拡大を目指す犯罪組織が最小のリスク、コストで実現するための手段として考える一手なのだから、この選択はごく自然な話なのだろうと思う。

しかし、罪を犯した者を更生させる施設である刑務所が犯罪組織の 市場拡大の拠点となるというのはなんとも皮肉な現実だ。さて、いかにして潜入捜査官が刑務所内で地位を確立し麻薬密売の拠点としていくのか、また、犯罪組織が刑務所を拠点とするメリットは何であるのか。ということは是非本書を手にとって確認していただきたい。

潜入捜査官の二重生活

パウラの妻、子供への愛情が強すぎて余計に潜入捜査官という過酷な役割が際立つ。生きるか死ぬかの状況を切り抜けた そのすぐ後に小さな子供を迎えに行くといった具合に、だんだん無理をしないといけない状況に追い込まれる。この二重生活も 現実の世界でありえることなのだろうと思うとやりきれない気持ちになる。

まとめ

公的機関はもちろん手のひらを返すように誰も自分を守ってくれいないという現実、潜入捜査官パウラにせまる絶対絶命の危機が何度も訪れる。生き延びるためには誰も信じないことだ!そして、最後には驚きの結末が……

本作は共著となっており、作家・ジャーナリストと服役経験のある更生施設評論家との共著である。その時点で潜入捜査の世界、警察・犯罪組織、刑務所内での出来事など一気に現実味を帯びてくる。 知られざる世界を経験し、取材してきた彼らの作品を是非読んでほしい。